英語の文章で何が書いてあるか分からない場合、次の理由が考えられます。
- 文の構造が分からない
- 知らない単語や熟語が多すぎる
- 内容が難しすぎて、日本語で書いてあっても分からない
このうち、知らない言葉や知識がゼロになることはありませんが、文の構造を100%理解することは不可能ではありません(英検の場合、文法的に間違った英文は出題されないのだからなおさらです)。そのため、文章を読むにはまず文から、構文解析から始めるのが妥当です。
命令文など特殊なものを除き、英文には動詞とそれに伴う主語があります。そして動詞によっては目的語や補語を取り、残りの部分はそれらの修飾句にすぎません。したがってまず、この幹の部分(S、V、O、C)を把握することが肝要です。
とはいえ実際には、単語の知識(品詞は何か、動詞は目的語や補語を取るか)や一般常識、専門知識(文の意味が通るか)などを総動員することになります。
基本事項
まず、構文を把握する能力が次のどの段階か把握する必要があります。
- 英文のみで分かる
- 日本語訳があれば分かる
- 構文を説明されて初めて分かる
1番目や2番目の状態なら、日本語訳だけの問題集でも対処できるでしょう。3番目の場合、文の構造が逐一説明されているもので勉強することをお勧めします。
例えば薬袋善郎『英語リーディングの秘密』(研究社、1996年)ではTIMEやNewsweekの文の構造が子細に分析されています。
伊藤和夫『英文解釈教室 新装版』(研究社、2017年)は英文読解の古典です。英語の構文を分析し、英語を読む際の頭の働きを解説しています。
柴田耕太郎『決定版 翻訳力錬成テキストブック』(日外アソシエーツ、2017年)はBertrand Russell、William Somerset Maugham、George Orwellなどの短い文章100編を徹底的に「読む」大著です。
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構文解析付きの問題集は他にもいろいろ出てますので、自分の能力と好みに合ったものを探してみてください。目安は、したいものよりできるものです。
学習の際、文法書を参照するとよいでしょう。綿貫陽 / 宮川幸久 / 須貝猛敏 / 高松尚弘(マーク・ピーターセン〔英文校閲〕)『ロイヤル英文法 改訂新版』(旺文社、2000年)が定番です。Windows版、Mac版、iPhone/iPad版、Mac App Store版、Android版をこちらから購入できます。
以下、気をつけたいことをまとめます。
個々の注意点
同じ語が文中で別の役割になる
- 英語で難しいのは、同じ語が別の品詞で使われる場合が多々あることです。例えばcause、experience、resultなどが名詞か動詞かは形で分からないことも多く、文の中の役割で判断するしかありません。
また、動詞には過去形と過去分詞形が同じ形のものも多くあります。どちらなのかは、これも文の中の役割で判断することとなります。
その中でも特に厄介なのは、現在形、過去形、過去分詞形が同形の動詞です。ただこれは数が少ないため、一通り覚えてしまうとよいでしょう。例えば次のものがあります。
bet(過去形、過去分詞形がbettedとなることもあります)
bid(過去形がbade、過去分詞形がbiddenとなることもあります)
burst
cast(broadcastもです)
cost
cut
hit
hurt
let
put
quit(過去形、過去分詞形がquittedとなることもあります)
read(発音は現在形が[ri:d]、過去形、過去分詞形が[red])
rid
set(upsetもです)
shed
shut(shutdownもです)
slit
spread
thrust(過去形がthrustedとなることもあります)
このうちcast、cut、setなどは名詞として使われることも多いため、文に出てきたらその都度、名詞、動詞の現在形、過去形、過去分詞形のどれかを判断する必要があります。
例えば
This cost valuable time.
という文だと、costが名詞でthisが指示形容詞なら動詞がありません。とはいえ、costが動詞の現在形でthisが主語ならcostsと三単現のsが付くはずです。そのためここでのcostは動詞の過去形で、thisが主語、valuable timeが目的語ということになります。
倒置
- 他動詞の後に目的語ではなく前置詞などがある場合、倒置の可能性があります。
例えばdescribe asの場合、本来はdescribe A as Bという形ですがAが長いためBの後に置かれ、describe as B Aとなっています。次のように、慣用句化している倒置もあります。
cut in half
keep in mind
put into words
take home
take into account
連語
- 補語を取ることがあまり知られていない動詞に気をつけましょう。例えば次のものがあります。
The door shot open.
I washed my hands clean.
The unit is smoked black.
- 動詞や名詞と前置詞との連係にも気をつけます。
例えば動詞の場合、inform O of、see O asなどでOが長いとつながりを見逃すこともありえるでしょう。
また名詞でも、impact、effect、influence、consequence、repercussionsなど「影響」を意味する語でthe impact of A on B(「AのBへの影響」「AがBに及ぼす影響」)という形を取る、つまり、on BがAではなくimpactを修飾することが少なくありません。
もちろん、on BがAを修飾することもあります。
また、the failure by (名詞) to doは「(名詞)が~しないこと」「(名詞)が~を怠ること」という意味になります。
- suchやthe sameがあったら、後にasがあるか確認しましょう。suchがthat(省略されている場合もあります)、the sameがthat、who、which、when、whereなどとつながっていることもあるので注意が必要です。
冠詞
- 名詞は、不定冠詞の有無や単数、複数によって意味が変わることもあります。agreementが「契約」でan agreementが「契約書」、damageが「損害」でdamagesが「損害賠償金」などです。
- 名詞(固有名詞を含む)が”the (修飾語) 名詞”で言い換えられることがよくあります。
例えば日本語では「大谷翔平(30)」などと書いて年齢を示しますが、英語だとShohei Ohtaniが出てきた後、”the 30-year-old baseball player”と言い換えて年齢を表します。
他にもAliceが”the girl”、North Korea”が”the nationや”the rogue nation”といった具合です。
冠詞については石田秀雄『これならわかる!英語冠詞トレーニング〔改訂増補版〕』(研究社、2024年)をご参照ください。「可算名詞と不可算名詞の使い分け」「単数と複数の使い分け」「定冠詞と不定冠詞の使い分け」が簡潔に解説されており、まず二つの例文を比べ、1項目を6ページで説明する形式となっています。
省略
- were、had、shouldが仮定法の条件説で使われる場合、ifが省略されることがあります。例えば、if you should think it necessaryがshould you think it necessaryとなります。
生物と無生物
英語では、生物と無生物を区別しない傾向があります。例えばmakerが人、機械、業者など、exporterが人、国、業者などのどれか一概には言えません。computerが「計算する人」なこともありえます。また、プロスポーツチームが選手を放出する場合、日本語では選手を「売る」「売却する」とは言いませんが英語ではsell playersと言えます。
sentenceからtext、contextへ
このようにして文(sentence)の構造を把握したら、文章全体(text)へと視野を広げていきます。
例えばitやtheyといった代名詞、上記のShohei Ohtaniをthe 30-year-old baseball playerと言い換えたものが何を指しているのかは、前の文を見ないと分からない場合があります。
それから、文章に書かれていないことに目を向けます。書かれていない一般常識や専門知識(context)が前提となっている場合があるからです。
例えばtaperingを辞書で引くと「漸減」などと出てきますが、経済用語では「中央銀行が量的緩和策による資産買い入れ額を徐々に減らしていくこと」という意味になります。経済面に明るくないと、思わぬ読み違いをするおそれがあります。
実際には、文、文章、文章外を無意識のうちに行き来していると思われます。
終わりに―文を「読む」意義
長文問題は英検の過去問や問題集でなくても、英文を読み慣れれば対処できる分野です。また、力が付けば安定した得点を期待でき、所要時間を減らすことができます。
語彙問題は知らなければどうにもなりませんし(類推はできるとしても)、ライティング、特に英作文問題は相性の悪い質問だとアイデアの出ない危険があります。リスニング問題は所要時間を短縮することができません。ですが長文問題を速く正確に解答できればライティングやリスニング下読みの時間を確保できますし、他でうまくいかなかった場合の最低点を底上げできます。
速く読むコツは、速く読もうとせず正確に読むのを心がけることです。そうしているうちに自然と速くなってきます。
何より構文を正確につかめれば、聞いて書いて話す能力も高められます。
自分の書いた文章が少なくとも文法的に合っていることを自分で確認できるようになりますし、リスニングの際にも先の予測がしやすくなります。例えば人名や場所などが列挙されている際、andやorが出てきたら列挙があと一つで終わることが分かるといった具合です。文法的に正しい文を話す時、役立つのは言うまでもありません(馴染むのに時間はかかるかもしれませんが)。
というわけで、英語力が伸び悩んでいると感じたら自分に問うてみましょう、文の構造が見えているのかと。