リスニング全般については、CEL英語ソリューションズ〔編〕 / ジャパンタイムズ〔編〕『最短合格! 英検1級 リスニング問題 完全制覇』(ジャパンタイムズ出版、2018年)のChapter 1、特に「聞き取れない症状と処方箋」と「リスニング力強化法」をご参照ください。英検1級受験者に限らず、リスニングを強化したいすべての人に役立つアドバイスが詰まっています。
例えば「単語レベルでは聞こえるが、全体の意味がつかめない」という症状には「ディクテーション、音読をする」という処方箋が示されています。
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ここでは特にディクテーションを取り上げます。
シャドーイングについては、「英検1級2次試験対策(準備編)」の「スピーチのシャドーイング」をご参照ください。
ディクテーションのやり方
ディクテーションとは、聞こえてきた音声を書き取ることです。注意点として、次の3点を挙げておきます。
- 一言一句違わず書き写す
- 聞き取れないところを推測する
- スクリプトと照らし合わせ復習する
以下、順に見ていきます。
一言一句違わず書き写す
とにかくまず、言われていることをすべて文字にしようとしてみましょう。分からない個所は取り敢えず空白にしておきます。
聞き取れないところを推測する
書き起こしていて聞き取れない個所が出てきたら、音声、前後の単語、文法、内容などから推し量ります。辞書やインターネットも活用します。
例えば
we should … a steak at the restaurant
と言っていて、…の部分でsamかsan何とかという1語のようだけど分からないとします。
この場合、前がwe shouldと平叙文で助動詞が来ており、後ろにあるa steakは名詞で目的語になりそうなため、…は動詞の原形が入りそうだと推測できます。そこで辞書で頭にsamの付く語を引いてみるとsample(~を試食する)が見つかり、どうもこれらしいと考えられます。
「英検1級1次試験の長文問題対策―構文解析」で書いた、構文を把握する能力がここで生かされます。
Googleのフレーズ検索も役立ちます。例えば
“becoming … in geopolitics”
のように、becomingとinの間の単語が聞き取れないとします。その際は全体を””で括り、不明な箇所を*に置き換え、
で検索すると、適切な表現が見つかる場合があります。becomeやbecameも検索に加えるなら、
[”become | became | becoming * in geopolitics”]
のように、語の間を|で区切ります。
このように、あらゆる方法を駆使して完璧に書き起こすことを試みます。
スクリプトと照らし合わせ復習する
自分なりに書き起こしたら、スクリプトを見て確認します。
スクリプトとは、話されていることが書き起こされたもの、すなわち「答え」です。
ディクテーションの教材
教材は、スクリプトがあり、スピードがやや速いけどどうにかついていけそうなものがお薦めです。
以下、難易度ごとに教材を紹介します。
長いものを全部書き起こそうとする必要はありません。30~40秒で十分です。
同じニュースが語彙の難易度を変えたLevel 1~3で示されており、音声の長さも1分前後で書き取りに最適です。
中級:Voice of America – Learn American English with VOA Learning English
BEGINNING、INTERMEDIATE、ADVANCEDとレベルごとに、ニュースが音声とスクリプト付きで提供されています。読み上げのスピードが通常より遅めなので、リスニングの練習に適しています。
上級:PBSのPBS NewsHour
米国の公共サービス。基本的にスクリプトが提供されており(完璧でないこともありますが概ね合っています)、News Wrapという、その日のニュースをまとめたものをアナウンサーが読み上げるコーナーが特に使いやすいでしょう。
終わりに―「聞く」のではなく「聴く」
英語を聞き流しているうちに理解できるようになるのは、5~6歳くらいまでではないでしょうか。それを過ぎるとそうした能力は退化しますが、別の方法で補えるようになります。
知識が増えれば、精読ならぬ「精聴」できるようになります。ディクテーションは、精聴に有効なツールです。
私が通訳学校に通っていた時、英語のニュースが速すぎて聞き取れませんでした。そこで事前に伝えられる「次の授業ではこのようなテーマを扱います」というお知らせを頼りに英語の記事を検索して内容を把握し、授業で聞き取れるふりをしていました。そうしているうちに、本当に聞き取れるようになった次第です。