英語の単語や熟語(以下「単熟語」と言います)を覚える上でまず考えなければいけないのは、何を覚えるかということです。
覚えなければいけないことは、能力や目的によって異なります。例えば医療関係者なら骨や筋肉の名前を覚えなければならないといったこともあるでしょう。それぞれの能力や目的に応じ、単熟語帳を選んでいただけたらと思います。
以下では、英検1級1次試験の語彙問題を前提とします。単熟語帳は、ジャパンタイムズ出版 英語出版編集部〔編〕 / ロゴポート〔編〕『出る順で最短合格! 英検1級単熟語EX[第2版]』(ジャパンタイムズ出版、2023年)(以下「『単熟語EX』」と言います)を使用します。
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ただし、その条件として、
問題文をすべて読むことができ、カッコ内にどのような意味の語句が入るか分かる
ことのできる方がいいでしょう。それが難しい場合、もっと簡単な単熟語帳にするのも一案かと思われます。
『単熟語EX』をどう使うか、例えば1日に何個覚えるのかなどはいろいろなやり方があるでしょう。ここでは活用法として、次の三つを提示します。
- 単熟語を分割して覚える
- 頭に入らなければ辞書などで調べる
- 必要以上に丸暗記しない
以下、順に見ていきます。
単熟語を分割して覚える
英単語には、接頭辞、語根、接尾辞に分けられるものがあります。例えばconstructionなら
- con(接頭辞)
- struct(語根)
- ion(接尾辞)
に分割でき、それぞれの意味は
- con(共に)
- struct(積み上げる)
- ion(すること)
となっています。
『単熟語EX』では単語の下で語根や接辞が示されており、コラムでも説明されています。しかし簡単にしか書かれていないため、詳しい書籍などで補うほうがいいでしょう。例えば次のものがあります。
佐藤誠司 / 小池直己『つながる英単語 語源ネットワークで覚える3000語』(ジャパンタイムズ出版、2014年)
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この本では、単語の語源が細かく説明されています。ただ基本的な語しか出てこないため、難しめのものも入っている方がいいなら次の本があります。
アンドルー・ベネット『語源で一気にマスター英単語〈語根まとめ編〉』(南雲堂、2013年)
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アンドルー・ベネット『語源で一気にマスター英単語〈接頭辞・接尾辞まとめ編〉』(南雲堂、2013年)
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辞書では『ジーニアス英和大辞典』が「語法のジーニアス」と呼ばれ、語源が詳細に書かれています。
語根や接辞を活用するメリットとして、『つながる英単語 語源ネットワークで覚える3000語』の裏表紙に書かれた言葉を引用します。
- たくさんの単語を効率的に覚えられる
- 知らない単語に出合っても、意味を類推できる
- 単語についての知識が深まるから、忘れにくい
このうち、意味を類推できるというのは語彙問題を解く上で重要なポイントです。例えばカッコ内に悪い意味の言葉が入りそうな場合、接頭辞がmalの語(malfunction、malaise、malignancyなど)を選べば正解の可能性が高いでしょう。
熟語の場合、後の方の語句(前置詞か副詞、out ofなどの句も含む)から選択肢を絞れる場合があります。
例えばカッコ内が「入ってくる(話に入るも含む)」という意味の場合、最後がinの選択肢(barge in、breeze in、chime in、weigh inなど)を選ぶと正解の可能性が高まります。
また、カッコ内に非難や攻撃を意味する言葉が入りそうな場合、最後がagainstやatの選択肢(get back at、go at、level atなど)を選ぶとよいでしょう。atはaimed atのように「狙いを定めて」というニュアンスがあるため、特定の相手を責める表現と相性がいいからです。
ただし、あくまでも当てずっぽうよりましという話ですので注意してください。
頭に入らなければ辞書などで調べる
短熟語を辞書を引いたりすると、覚えやすくなるかもしれません。例えばconscription(徴兵制度)は『単熟語EX』で
con-(共に)+script(書く、登録する)+ion名
と書かれていますが、共に書くことがどうして徴兵制度になるのか分かりません。
そこで「天才英単語 | 英単語の覚え方辞典」でconscriptionを見てみると、語源として、何かを共同で書き記すことから派生して人々を共同で組織する行為を指していたのが、軍隊における徴兵の意味で使われるようになったことが書かれています。
必要以上に丸暗記しない
reptile(は虫類)やpneumonia(肺炎)など、英語と日本語が1対1で対応している語は日本語をそのまま覚えるしかありません。しかしskirmishなら「小規模な戦闘、小競り合い」と書いてあるとおりでなくても、どういう意味か分かっていれば問題ないでしょう。日本語訳は答えではなく、英語を理解する手がかりです。
例文とその日本語訳を丸暗記する必要もありません。用法を確認できれば十分です。
単熟語帳と問題集との往復運動
単熟語帳を一通り確認したら、問題集を解いてみます。ロゴポート〔編〕 / ジャパンタイムズ出版 英語出版編集部〔編〕『出る順で最短合格! 英検1級 語彙問題完全制覇[改訂版]』(ジャパンタイムズ出版、2019年)は解説が丁寧で、語彙を増強したいすべての人に役立つでしょう。
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ポイントは、完全に暗記していなくても問題集をやってみることです。長文問題に取り組んでもいいでしょう。それから単熟語帳に戻れば、前より覚えやすくなっているはずです。ここまで「覚える」という表現を使ってきましたが、脳に馴染ませるといった方がいいかもしれません。
このようにして、単熟語帳と問題集との間で往復運動をすれば相乗効果が生まれます。要は、単熟語帳の中だけで完結しないことです。単熟語帳は英語を読み、聞き、書き、話すための補足物にすぎないのですから。