英検1級2次試験対策(準備編)

まず対策をいつ始めるかですが、英検1級を受けようと決めた時からでも早くはありません。スピーチは日常会話と異なる特殊な作業ですので、慣れが必要となります。まだ難易度が高いなら、もっと簡単な話す練習でもいいでしょう。特に英語を普段話していない人は、話す癖を付けておいた方と思います。

目次

スクールに入学

2次試験対策で最も一般的な方法は、誰かに面接委員の役割を引き受けてもらい模擬面接をすることではないでしょうか。ただ1級ともなると難易度が高く、単に英語ネイティブなだけでは対応できません。そのため適切なスクールに入るのが近道です。

私はバリューイングリッシュ「英検®1級2次面接試験 対策コース」を受講しました。講師はフィリピン人ですが英検に通じており、内容や発音などについて適切な指導をしてくれます。

ちなみに「スキルアップコース」だと、対策以外のやり取りに柔軟に対処してもらえます。

Nana先生が一番人気ですが、その分、授業が取りにくくなっています。そのためまずNana先生の授業を何度か受け、自分の能力や性格を知ってもらった上で他の先生を紹介してもらうことも選択肢です(Nana先生に失礼かもと思いましたが、快く対処していただきました)。

スピーチを推敲

ただ、授業の効果を高めるには、それからスピーチを推敲することになります。人や生成AIの書いたものを丸暗記する手もありますが、それだと本番でど忘れしたら臨機応変に対応できず、言葉が出てこないかもしれません。また、質疑応答に対処しなければならないことを踏まえると、内容についてインターネットなどで深堀りしておく必要があります。何よりそれでは考える能力が鍛えられません。以下、英検後につながるようスピーチを自分で書くことを前提とします。

一番気をつけるのは、ライティングの英作文問題と同様の型、具体的にはPREP、すなわち、Point(主張)、Reason(理由)、Example(具体例)、そして再びPointの順に文章を構成することです。

PREPについては、遠田和子 / 岩淵デボラ『英語「なるほど!」ライティング』(講談社インターナショナル、2007年)CHAPTER 12「英文はとにかく『結論が先』-『起承転結』から抜け出そう」CHAPTER 13「エッセイを書こう-PREP手法」をご参照ください。

理由と具体例は1個ずつだと時間が余るでしょうし、3個でも収まる可能性はありますが、本番で緊張していることなど考えると2個が無難でしょう。具体的には次のようになります。

Question: Can modern farming provide sustainable food in our warming world?

Speech: Modern farming can provide sustainable food for some reasons.

First, aquaculture has advanced. For example, inland aquaculture can control the breeding environment, enhancing productivity while reducing the environmental load. Thanks to this method, humans don’t need to depend on oceans or rivers, when the global climate is getting warmer.

Second, agriculture in water has developed. For instance, using vertical farming, it’s possible without ground, namely, vegetables and fruits are able to be grown in a building. The so-called “plants for plants” can be created in harsh environments.

So, we’ll be able to have enough food in the future.

two reasonsではなく”some reasons”と言っているのは、話しているうちに3個目の理由が出てくるかもしれないからです。

ライティングでは短縮形を使用しませんが、話す際には使用してかまいません。

客観的な理由にする

理由は客観的なものにしましょう。例えば、

Should Japan accept immigrants?

という質問にNoと答える場合、

I do not like foreigners.
I do not want aliens to live near me.

など気分や感情に基づくのではなく、

Immigrants disturb the social order.
Settlers may impair traditional culture.

のようにします(共感できるかは置いておきます)。

他にも、多くのスピーチ(および質疑応答の回答例)を「英検1級2次試験のスピーチサンプル」で紹介しています。

答えをあらかじめ準備する

スピーチでは、質問を想定して答えをあらかじめ準備できる場合があります。例えばvertical farmingやsmall modular reactorなど耳慣れない言葉を言うと、”What’s vertical farming? Could you explain it in detail?”と質問されることが十分考えられます(実際に私は質問されました)。そこで準備しておいたことを話せば、文法や語彙面で十分な回答ができるでしょう。以下、vertical farmingでの回答例です。

Vertical farming is the practice of growing crops in vertically stacked layers in a structure. It can increase crop yield with a smaller land, and cultivate a larger variety of crops at once, because crops don’t share the same plots. In addition, because of its limited land usage, it’s less disruptive to the native plants and animals, leading to further conservation of the local flora and fauna.

これくらいの分量で、話す時間は1分強でしょうか(本番ではゆっくり落ち着いて話すのが無難です)。2次試験の質疑応答は4分間なので、すべての質問にこの量で答えたら4問目の途中で時間切れという計算になります。そのうちの1問を確実に答えられれば相当なアドバンテージとなります。

完璧なものを目指す

このようなスピーチを、まずは時間がかかっても文法的にも内容的にも完璧なものを書くようにしましょう。その際、辞書やインターネット、WordやGoogleドキュメントのスペルチェッカーなどをフル活用します。英語は同じ言葉を何度も使うのを嫌うため、英語の分類語彙辞典(シソーラスと言います)で類義語や対義語を探すのもいいでしょう。

基本的なものは、佐藤誠司『ビミョウな違いがイラストでわかる! 英単語類義語事典』(西東社、2020年)に書かれています。例えば「示す」に対応する英語として、show、demonstrate、point、display、designate、represent、express、indicate、suggestが挙げられています。

Thesaurus.comでは類義語や対義語を検索できます。類義語を多く覚えておけば、ライティングでも役立ちます。

スピーチでの注意点

トピックには、不得意な分野もあるでしょう。本番では専門知識のないものを選ばないのが無難ですが、絞り込みすぎると答えられるトピックが限定されすぎる危険があります。そのため準備段階では、これまで考えたことのないものにもある程度対処しておくことが必要です。その分調べる手間はかかりますが、思いがけず他のスピーチに転用できる場合もありますし、何より自分の向上につながります。私の場合、上記のmodern farmingに関するトピックについて考えたこともなかったので一から調べました。そしてその成果を他のスピーチでも活用しています。

専門性にこだわる必要もないでしょう。英検はあくまで英語の試験ですので、学問的に認められるレベルの見解は求められていません。自分の社会的立場や地位を意識する必要もありません。例えばお医者さんなら日常では安楽死についてうかつなことは言えないかもしれませんが、これはあくまで試験ですので、話しやすければ業界で物議を醸しそうなことや、自分の意見と異なることを言ってもいいのです(ただし、自分の主張に沿ったスピーチをする方が、質疑応答で答えやすくはあるでしょう)。

そもそも、尋ねられていることはyesかnoと簡単に決められるようなものではありません。現実にはさまざまな妥協が必要でしょうが、敢えてどちらかの立場に立った上で議論を展開しているのです。どちらの立場に立つかは、試験では重要ではありません。試されているのは、型を守って説得力のある主張ができているかどうかです。

スピーチのシャドーイング

このようにスピーチを書いたら、声に出して読みましょう。原稿を見ながらの音読でもいいのですが、音声読み上げツールを使ってシャドーイングをするとさらに効果的です。

シャドーイングとは、耳にした音声を影(シャドー)のように後について復唱するやり方です。原稿を見ないで行いますが、最初は見てもいいでしょう。同じスピーチを何度も(50回以上?)行っていると、そのうち見ないでも言えるようになってきます。そして、2分という本番での時間感覚もつかめてきます。

そうした読み上げツールの一つに、Balabolkaというソフトウェアがあります。スピーチを書いたテキストファイルをBalabolkaで読み込み、アイコンをクリックするかF5を押せば音読してくれます。

ディスプレイ付属のスピーカーで再生すると、再生してすぐソフトウェアが終了する場合があります。

シャドーイングする上で大きいのは、任意の場所で音読を止め、そこから再開できることです。カーソルを移動すれば、移動後の位置から再生できます。停止はアイコンなどでもできますが、タイミングがずれやすいのでマウスでクリックする方が確実でしょう。

英文が長くて息が続かない場合、コンマを入れれば区切って読まれます。

固有名詞などで英語の発音が実際と異なっている場合、次のようにして修正できます。

例えばXi Jinpingの場合、

1. 「辞書パネル」アイコンをクリックし、辞書パネルを表示する。
2. 「辞書パネル」を右クリックし、「新規作成」を選択して辞書ファイルを作成する。
3. 「次を発音:」に「Xi」、「このように:」に「she」を入力し、「追加」をクリックする。
4. 「次を発音:」に「Jinping」、「このように:」に「zinpin」を入力し、「追加して保存」をクリックする。

このようにしてスピーチを書き、音読する作業を繰り返すのが王道でしょう。バリューイングリッシュで相談すれば、スピーチの内容や音読の様子を確認してもらえるかもれません(保証はできません)。

終わりに

2次試験の難しいところは、どれだけ準備しても、用意してきたスピーチをそのまま行えるトピックが出題されないかもしれないことです。ただ、準備すれば合格の確率は上がりますし、英検後にもつながるでしょう。数あるのみです。

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